1.おはよう、神楽ちゃん
朝起きて、押入れをガラッとあけると、そこには銀ちゃんがまだ寝てる。
それか、新八が銀ちゃんに突っ込んでる声が聞こえる。(怒鳴り声だったり冷めた声だったり)
それで私もそこに入っていって朝ごはんを食べる。
・・・・いつもなら、そうなる筈だった。
どの部屋を見ても、誰も居ない。
押入れの中からコタツの中、冷蔵庫の中からゴミ箱の中まで至る所まですみずみと探した。
でも、誰も居ない。
定春も、新八も、銀ちゃんも。
「定春?新八?銀ちゃん?」
私がみんなの名前を呼んでも誰も返事をくれない。
誰も姿を現してくれない。
物音すらしない。
また、私は独りになってしまったアルか?
嫌だ。
もう、独りにはなりたくない。
あんなに寂しくて、悲しい思い、もうしたくない。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
そう思いながら私は頭を抱えて座り込む。
あたりは真っ暗。
まるで自分の心の中をあらわしているように。
目をぎゅうっと瞑って。
「神楽、神楽、」
ふと、銀ちゃんの声が聞こえた。
がらっという音と共に光が差し込んでくる。
「ぎん、ちゃん?」
口をやっとの思いで開き、そう呟いた。
呟いた後に思いっきり瞑ってた目を開く。
すると、さっきとは全然違った明るい景色が目に映る。
そして、銀ちゃんも。
「怖い夢でも見たか?」
銀ちゃんがそう言ってにこっと笑った。
その笑顔を見てああ、さっきのは夢だったのか、とわかった。
今度は銀ちゃんの手が伸びてきて、私の頬をぬぐった。
私は、きっと、泣いていたんだ。
今度は、新八がこっちの部屋に入ってきた。
「銀さん、神楽ちゃん起きましたか?」
新八はお玉片手に入ってきた。
きっと朝ごはんを作っていたんだ。
そう思うと、現実味が増して、目がぱっちりとさめた。
end