今日は珍しく一人で市中見回りをしていた。
すると、目の前にはよく知った傘を持ったピンク頭がいた。
あいつも珍しく一人だ。あのでっかい犬もいない。
総悟がいたら真っ先に近寄りに行くだろうけど、俺はもちろんそんなことをしない。
あいつらにかかわるのはメンドクサイからだ。
そんなことを考えていたら、目の前のピンク頭がこっちを振り向いた。
ピンク頭はいつもなら俺に話しかけたりはしない。(銀髪とか総悟とかいたら別だが、)
でも、今日は違った。
何故か話しかけてきた。
外に出なければ良かったです。
なぜなら、面倒くさいからです。
アレ、作文?
こ ど も の 日
「あ、マヨラー」
そう声を掛けられて、俺は無視をする。
こいつにかかわっても絶対いいことなんて無い。
今のは聞かなかった事にしてその場を通り過ぎる。
「無視してんじゃねーヨ税金ドロボーが」
これも聞かなかった事にする。
大丈夫だ、俺はまだ我慢できる。
何を言われても聞かなかった事にしろ自分。
「あ、マヨが落ちてるヨ」
「どこだっ!?」
しまった、と思ったときにはもう遅かった。
目の前にいるチャイナはニカッと笑って俺を引っ張って行った。
ガキとはいえ夜兎族のチャイナには反抗ができなかった。
いや、がんばればできたんだろうけど俺は反抗をすることをしなかった。
※ ※ ※
「トッシー、今日は何の日か知ってるカ?」
「あ?今日何日だ?」
「五月五日ヨ」
「こどもの日か」
俺たちは、公園のベンチに座っていた。
真選組とガキが一緒にいるところを見て周りのやつは変な風に思っているだろう。
もしも総悟がこんなところにいたら大変だ。
アイツはチャイナのことを気に入っているから俺が一緒にいるところを見たら絶対に俺へのイビリが多くなるだろう。
そんなことがあったら、もっと面倒くさい事になる。
「違うヨ
他の事アル」
「違うのか?
こどもの日だから俺にたかろうかとしてたんじゃねーのか?」
思ったことをそのまま口に出した。
こどもの日だから、ってんじゃないのならなんでチャイナは俺になんか話しかけてきたんだ。
「こどもの日なんて私には関係の無い事ネ
立派なレディーに何を言っているアルか」
どこらへんが立派なレディーなんだ、と俺は口を挟もうとしたけどそれはやめた。
否、いえなかった。
チャイナがどことなく悲しそうな顔つきをしていたからだ。
俺は、いつもならそんなことを気にするような性格はしていないつもりだったんだが。
なぜか心に引っかかった。
「もうわかんないならいいアル
えっと、」
チャイナはそう言って持っていた袋をごそごそとやっていた。
何か出すつもりなのか、と思っていたら俺の大好きなものが出てきた。
「誕生日おめでとうアル」
そういって、マヨネーズに赤いリボンを付けたものを渡してきた。
ああ、そうか。
五月五日は俺の誕生日か。
それでめずらしく俺に話しかけてきたのか。
でも、なんでチャイナが俺の誕生日を知ってたんだ?
なんでチャイナが俺にこんなのも渡してきたんだ?
「なんでお前が、俺に、」
「細かい事は気にするなヨ
ありがたく受け取るヨロシ」
細かくなくね?と思ったのはとりあえず胸にしまっておいた。
めずらしくチャイナがこんなことをしてくれたんだから、わざわざそんなことを言ってこの場の雰囲気を悪くするのはやめておこう、と思った。
急にチャイナがどことなく悲しそうな顔つきをしていた意味がわかった。
すると、不思議と体が勝手に動いた。
「どうしたネ?急に立って」
「来い。いいものやるよ」
柄にも無く、俺はチャイナを引き連れてあるところに向かった。
向かった先は、駄菓子屋。
「トッシー?」
チャイナが俺を見上げて小首をかしげる。
多分、誰でも頬を高潮させてこの仕草は可愛いと思うだろう。
俺は頬を高潮させる事は無かったが、不覚にも「可愛い」と一瞬思ってしまった。
それを振り払うようにしてチャイナに話しかけた。
「マヨを買うので金を使い果たしちまっただろ?
酢昆布でもなんでも買って来い」
俺はそう言って財布から金を取り出し、チャイナに握らせた。(いくらかは、あえて言わない)
チャイナは自分の手の中を見た後、また俺を見上げてきた。
「今日はトッシーの誕生日アル
なのに、なんで、」
「いい加減、トッシーっていうのやめろ
今日は、こどもの日だろ?」
チャイナは、始めはぽかん、としていた。
しかし、すぐににこっと笑って言った。
「アリガトウ!」
end