一気に蕾が花開いたその瞬間は、誰も見逃さなかった。
夏 祭 り
「さあ、可愛くできたわよ神楽ちゃん」
「わあ、ありがとう姉御!
ねぇ銀ちゃん、どうアルカ?」
「・・・・・・」
「似合ってるよ、神楽ちゃん!」
お妙と新八はニコニコと微笑みながら神楽を見て。
神楽は少し口元を緩ませながらも緊張したような顔で銀時を見て。
そして銀時はいつもの死んだ魚のような目じゃない目で固まって神楽を見ていた。
ここは、志村家・・・つまりは新八の家である。
銀時が夏祭りに行く事を了承したすぐあとに新八が今はお妙が家に居るから浴衣を着せてもらえばいい、きっとお妙は喜んで着せてくれるだろう、と神楽に言ったのだった。神楽がせかして3人はすぐに新八の家に向かった。(神楽はぐずったが定春は万事屋で留守番だ)案の定お妙は了承してくれた。いつも微笑んでいる顔をもっと綻ばせて神楽の体に合う浴衣を探して着させてくれた。
紺地に赤い金魚の浴衣が色白な体をいつもよりも引き立たせていて、髪の毛もいつものお団子頭ではなく後ろでポニーテールに結っていて。
そして出来上がった神楽は、いつもの乱暴さをちっともかんじさせない、通る人は誰でも振り返るような可愛い、そして綺麗な姿に変わっていた。
見慣れたチャイナ服から浴衣に変わった姿を見て可愛い、と言ってくれた新八やお妙を見て神楽は嬉しくなったが何も言わなかった銀時を見てやっぱり変だったのでは、と思わずにはいられず神楽少し肩を落としていた。
そんな神楽を見たお妙は銀時の方に向いて言った。
「銀さん、神楽ちゃんに何も言わなくていいんですか?」
神楽ははっと肩を上げお妙を見るといつもの倍の微笑で返してくれた。そして銀時のほうを向く。
銀時は面食らったような顔で神楽のようにお妙を見てから神楽の方を見た。
みんなが緊張しているのが伝わる沈黙。
その沈黙を破るようにして、銀時が固まった表情をかえ、頬をかいて口を開いた。
「まぁ、似合ってんじゃねーの?」
その一言でさっきの沈黙はかき消された。
まるで、寒く冷たい風がずっと吹いている中で一気に暖かい風に変わり、冬から春に変わったかのように。
そして、一輪の花が咲いた。
「ありがとう、銀ちゃん!」
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