「何うちの可愛い妹に手ェ出してんの?」
神威さんのその一言で、その場は雷が落ちたかのようにびしっと固まった。
固まっていないのは3人だけだ。
その3人というのは、言った本人の神威さんと、その言葉に今にも拒絶反応を起こしそうなすごい顔をした神楽ちゃん、そして状況がつかめていない沖田さん。(神威さんが入ってきたときは寝ていたから神遺さんの事は何にも知らない)
あ、もう一人いた。先生がそんなことどうでもいいかのように耳をほじっていた。
ー沈黙。
一分にも満たない、たった何十秒かの間。
しかしその時間は、僕たちにはとても長くかんじられた。
その沈黙を破ったのは沖田さんだ。
「アンタ、チャイナの兄貴かィ?
道理で生意気そうなツラしてるわけだ」
今度は神楽ちゃんじゃなくて神威さんに敵意むき出しの沖田さん。
なんか、沖田さんと神威さんは似てる。
腹黒いのからかな、笑顔がとっても似てる。
「君には言われたくないね」
全くだ、と思ったのは僕だけじゃあないはず。
いや、でも神威さんにもそんなこと言われたくない。
どっちもどっちだ。
二人はにらみ合っている。
それも、笑顔で。いや、目は笑っていないが。
こういうのが一番怖い。
そのいがみ合いを止めたのは、やっぱりというべきか神楽ちゃんだ。
「二人で何言い合ってるアルカ
それより、何でお前がここにいるのか聞いてるアル」
神楽ちゃんはそう言って神威さんの方を指差した。
神威さんは相変わらずにこにこしている。
一方、沖田さんは神威さんから目をそらして机に突っ伏して寝始めた。
「神楽が心配でね」
「本当のこと言えヨ」
神楽ちゃんはそう言って神威さんをギロッと睨んだ。
相当神威さんのことが嫌いらしい。
「神楽の事が心配だったっていうのは本当だよ
まあ、本当の理由は、」
ゴクリ、そんな音が神楽ちゃんから聞こえてきた。
「この学校には面白い人がいるって聞いてね」
神楽ちゃんは、まだ神威さんを睨み続けている。
そういえば、周りの人たちはみんな一言もしゃべっていない。
多分、この二人のオーラに圧倒されているんだと思う。
そして、神威さんは神楽ちゃんのほうを見ていた顔をくるっと前に向けた。
その顔の先は、
「坂田銀八先生、アンタの事だよ」
next