憎い
あいつの全てが憎い
あいつは私の全てを奪った
なのに何故あいつは今笑っている?
やっと私があいつのものを奪う時が来た
「神楽ちゃん!随分遅かったね
心配してたんだよ
って泥まみれじゃないか!」
「ただいまヨー」と言いながら万事屋に帰って来る神楽。
夕飯を作っていて片手にお玉を持っている新八にソファーに寝転びながらジャンプを読む銀時。
いつもと何も変わらない万事屋でのひと時であるかのように見えるが、ふたつ違うところがあった。
ひとつ目は、時計だ。
いつも神楽が帰ってきた時は、針が5を指している。
しかし、今時計が指している数字は7だった。
もちろん午後の、である。
神楽は5時という門限を必ずといって良いほど守っていた。 5分や10分、百歩譲っても1時間遅れるならまだわかるが、2時間も遅れたのだ。
ふたつ目は、神楽のこの泥まみれの姿。
今は雨が降っているから派手に転べばこれぐらい泥が体中につくだろう。
しかし、だ。
神楽の身体能力の高さからいえば、ただ歩いていたり走っていたりしただけで派手に転ぶことなどないはずなのだ。
「雨が降ってたから心配してたけど・・・
傘は持って行ってたでしょ?」
「転んだだけネ」
訝しげに眉を潜めながら神楽に問い掛ける新八だが、神楽の返事はそっけない。
神楽の服についている泥を見た新八は洗濯が大変だな、と思いながらあることに気付いた。
神楽の服はあちこち切れていて、赤黒い染みがついていたのだ。